ICO
709この人の手を離さない、そう思った。幼き少年と少女が織りなす霧の城の物語。
角が生えた不吉な子供として生まれ、人里離れた巨大な霧の城へ幽閉されてしまった少年・イコが、そこで出会った言葉の通じない不思議な少女・ヨルダと手を取り合いながら、次々と襲いかかる黒い影の化け物たちをかわしつつ外界への出口を目指して荒涼とした石造りの迷宮を駆け抜けていくアクションアドベンチャーゲームです。 プレイヤーは少年イコを操作してヨルダの手をしっかりと握り締めながら広大な要塞の足場を渡り歩き、時には彼女を安全な場所に待たせて仕掛けを解くための鍵を探し出したり、城の住人である影の魔物たちから彼女を守るために木の棒を振り回して奮闘していきます。 開発を手掛けたソニー・コンピュータエンタテインメントのプロダクションズや上田文人氏をはじめとする制作陣において、過剰なUIや体力を示す数字のバーを一切画面から排除し、光と影のコントラストや風の音、そしてプレイヤーの没入感を極限まで高めるための引き算の美学が徹底的に追求されました。 ただ敵をなぎ倒すだけの爽快感とは一線を画し、か細い少女の手を引いて歩くという独特の身体感覚や、限られた会話のなかで育まれていく二人の切ない絆が当時のインディーカルチャーやクリエイターたちの感性を強く揺さぶった最大のセールスポイントとなりました。 無機質で静寂に包まれた世界のなかで繰り広げられる手をつなぐアクションと、言葉を交わさずとも通じ合う独特の情緒が少しの妥協もなく噛み合い、レトロゲームの棚にアドベンチャーゲームが到達した新たな表現の地平とあの日の静かな感動をしっかりと刻み込む非常に価値の高いタイトルです。

